月刊青島--青島日本人会生活文化会発行
目次

青島での21 日間の隔離体験記(2021 年1~2 月)

日中経済協会北京事務所 澤津直也

■はじめに ■なぜ青島便にしたのか

  北京駐在まもなく満5 年を迎える筆者は、今般
コロナ下で本帰国する帯同家族を引率して一時帰
国し、全日空直行便での往復(12 月20 日:青島→
成田、1 月20 日:成田→青島)ならびに青島で2
月10 日まで21 日間の隔離ホテル生活を経験した。   中国入国時の隔離といえば、経験者により「二
度とイヤ派」と「想像より快適派」の両論があると
ころ、本稿にはいずれの情報も含まれている。誰
だって隔離などイヤだが、どうせ受けるなら快適
に隔離されたい。こうした予備知識を得ることに
より、隔離生活をネガティブに捉えている方も無
防備で隔離に突入するよりは遥かに備えができ、
不安も払拭されるものと期待する。
  昨今、直行便が就航する各都市政府間では、隔
離環境を競うように改善しているときくところ、
青島で世話になった1 人として「隔離なら青島」
を少しでも印象づけられるなら望外の喜びである。

  北京便が中断するなか、本稿執筆時点で日系航
空会社の直行便が運航しているのは、上海、青島、
杭州、広州、深圳、大連の6 都市だけである。
  筆者は家族5 人の本帰国に際し、なるべく多く
の家財を持ち帰る方法として「陸路で」就航都市
を目指すことを思いついた。候補先は青島と大連
であったが、北京から一番近いことが決め手とな
り、青島⇔成田のフライトを手配した。
  出国日は、未明に北京を出発して青島まで8 時
間、コースターに揺られたのであった。深夜1 時
に公寓から大量の荷を積載する姿はさながら「夜
逃げ」。成田着後はハイエースに荷を積み替えて日
本での自主隔離先へ。一連の積載ギチギチの写真
をみた同僚から「北海道一周旅行か」と失笑され
たことくらい、取るに足らないことである。

 

■青島空港到着後の手続き  

  話を一気にスキップして中国入国時(青島空港
到着)に進めたい。以下で〔 〕内は、参考通過時
刻である。
  1 月20 日、成田から3 時間のフライトで青島に
着陸〔12:20〕すると、降機後すぐ防護服を来たス
タッフが待ち受け、普段は無い特設カウンターが
設置されていたり物々しい雰囲気が。「いきなり怖
いオジサンに連れていかれてしまうのか」と身構
えたが、よくよく見たら防護服にANA の青いロゴ
が貼ってあって一安心。すなわち、全日空の空港
スタッフが、青島市当局の係員に混ざって特設カ
ウンターでの「電子健康申告」を日本語でサポー
トしてくれたのだった。〔12:35〕
  その、電子健康申告とは、要はWeChat ミニプロ
グラムを通じて個人情報やフライト情報、健康状
態を中国税関へ申告するもの。申告が完了すると
当日限り有効のQR コードが発行されるのだが、こ
れを予め取得しておくべしと、日本(成田空港な
ど)でも全日空から再三案内を受けていた。過度
な心配は無用だが、この入力フォームの仕様がま
た一癖あって、誰もが一度はイラっとつまづく羽
目になる(ここでのネタバレは伏せておこう)。な

お、筆者は座席番号を打ち間違えしていた(こと
を実は薄々自覚もしていた)のだが、面倒くささ
に負けてそのまま申告したら即バレ。書き直し&
列に並び直しという憂き目にあった。そもそもが
「申告内容に虚偽があった場合、法的責任を追う
ことに意義ありません」との規約に同意させられ
ているわけであり、注意が必要である。
   その次は、空港でのPCR 検査〔12:55〕。筆者が
その時まで3 回経験したPCR 検査で最大試練だっ
たことを書き留めておきたい。仮設検査室に案内
されてドキドキしていると、険しい顔をした係員
女性が、鼻へ、喉へと綿棒をサディスティックに
ぶっ込んでくる。それはもう、鼻はギンギン、ノド
は「ゥオエっ」と声出ちゃったレベル。挙句、「ア
イヤーそんなヘッピリ腰では検査もままならない
(←意訳)」と叱咤されてしまう。こちらも、心の
中で「はいはい、やられたー」と毒づく。
   続いて、入国審査〔13:05〕。ここには「ちゃんとやっても無限ループする指紋登録器」というチャ
イナトラップが潜んでいたわけだが、これとて「青
島空港名物」らしい。両手親指→両手4 本指と繰
り返し、10 回押し当てても完了しない。「リョウテノオヤユビヲ オシテ クダサイ」の日本語コン
ピュータ音声におちょくられているようでイラッ。

 

両手が手荷物で一杯だったから、更にイライラッ。
とにかく話題に事欠かない国である。
  一連の手続きが無事に終了し、ターンテーブル
で託送荷物を受け取ったら〔13:20〕、出口にて「移
交記録書」を係に手交し、手洗いに寄ったらいよ
いよ隔離ホテル行きシャトルバスに乗り込む
〔13:40〕。政府係員がパスポートを確認すると、
中国人と外国人は別レーンに案内され、外国人が
専用の固定ホテルへ確実に向かえるように運用さ
れている。
  バス内では、防護服姿の乗務員と乗客の座席が、
アクリル板で完全に仕切られている。名簿にある
日本人が全員乗ったら空港を出発〔14:05〕。1 時間
半バスに揺られて隔離ホテルに到着〔15:35〕、そ
してホテルへチェックイン。結局21 日間を過ごす
こととなった隔離部屋に入室したのはちょうど
16:00 だった。

  なお、外国人は専用車で指定ホテルに連れてい
かれる。伝え聞いたところでは、全日空が青島市
政府と直接交渉して、日本人の隔離環境を改善し
てもらうべく調整してくだった結果なのだそう。
隔離ホテルの名はズバリ、「青島紅樹林度假世界
(マングローブツリーリゾートワールド青島)」だ。
  青島着陸後の空港での出来事を振り返ってみる
と、受け入れ体制は非常に練りあがっており、覚
悟していたよりは遥かにスムーズに感じた。コロ
ナ下で国際直行便を受け入れるには、地元政府も、
空港当局も、そして航空会社やホテルも、関係者
はかなりの準備と覚悟が必要なはず。我々はPCR
検査代や往復バス代も徴収されていない。我々渡
航者が「コロナ禍なんだから当たり前のサービス」
などと奢らぬよう、ここに記して関係者へ謝意を
表したい。

■隔離ホテルのあらまし  

  隔離ホテルに到着すると、一般観光客と隔離者
は完全に出入口が別動線の別棟であり、ホテルで
待ち構えていた係員も全て防護服姿であった。降
車から隔離部屋までの移動では、車内でゴム手袋、
ビニールシューズカバー、不織布マスクが配られ、
装着を求められる。とにかく徹底したくなるのが
人情というものらしい。
  ロビーでは、一定距離を保った6 つの登記台に
分かれて、個人情報や連絡先など記入。書けた者
から順次宿泊代を前払いで納め(500 元/泊×14 日
=7,000 元、筆者の場合WeChat Pay、発票発行可)、
隔離中の連絡ツールとなるグループチャットへの
加入を促される。こんなもの、世では便利だと多
用されているものの、要は管理側にラクさせるだ
けのためにプライバシーを晒されるわけだが、隔
離される側には決定権もなく、やむを得ないと心
に言いきかせる。
  手続きを終えると、係の誘導で隔離部屋へ案内
される。ホテル着後から入室までトータルで30 分
ほど。ホテルでのチェックイン手続きは、実によ
く効率化されていると感心した。

   部屋は50 平米ほどで清潔感は満足。トイレやシ
ャワールーム(湯舟なし)も衛生的で、洗面台は洗
濯にも使えると思われた。
   ここは毎週水曜に運航している全日空便に搭乗
した外国人専用の隔離ホテルで、毎週20~40 人程
度が隔離を受けているらしい。ホテルは高級リゾ
ートホテル群にある1 つで、3 棟・2500 客室を誇
る。そのうち1 棟3 フロアが隔離用として使用さ
れており今後隔離用フロアは拡大予定だという。
青島で外国人の場合は、この隔離ホテルに固定さ
れているということは、事前の備えもできる点で
安心感があり、メリットは大きいだろう。
   また、隔離を受ける外国人のストレス軽減への
配慮から、全員に壮観なオーシャンビューの部屋
が充てられている。これも全日空が交渉したと側
聞した。確かに、見晴らしが良いだけでも気分が
全然違う。夜景までもが上々で、テンション上が
る。豊かな眺望の向こうには、小春日和に年甲斐
もなく水遊びをして、びしょ濡れになっているオ
バちゃんの小団体がみえたりして微笑ましい。

■隔離中のルールと生活パターン  

   基本ルール・原則から列挙してみたい。気にな
るネット環境は上々で、無線LAN の通信速度でス
トレスを感じたことはない。部屋外へ出ることは
許されず、自慢のオーシャンビューもバルコニー
には出られないよう、ドアが15cm までしか開けな
いロックがかかっている。宅配荷物は受けるは可
/出すは不可。ワイマイ(出前)は不可だが、ホテ
ルが和食やアルコールを含むルームサービスを提
供してくれる。ちなみにワイマイが許可されたと
しても、ホテルの立地が辺鄙過ぎて、適切な店が
あるかは微妙ではなかろうか。辺鄙さをたとえる
なら、私物のモバイルWiFi ルーターが2G アンテ
ナしか立たないほど。
   食事は1 日3 食が、8:00、11:30、17:30 に弁当
で部屋の前に置き配され、ノックで知らせてくれ
るが、食事の質については後で詳しく称賛する。3
食をはさんで10:00 と15:00 には、検温係が巡回
してきて、オデコをピッと。これらに対応し続け
ていると、必然と規則正しい生活リズムが確立さ
れてくる。

  隔離当初は、「3、7、12、13 日目には4 回のPCR
検査、7、13 日目には血清抗体検査」の巡回が予告
されていた。隔離部屋から一歩も部屋出られない
というのに、青島では一体何回検査をさせるのだ、
と、科学的説明を求めたくなる。青島ではない別
都市の隔離時のPCR 検査は初日と最終日の2 回だ
けだったと聞いていただけに尚更のこと。しかし
後日、政策変更だという説明で12 日目の検査だけ
が中止となった。さすがに気づいてくれたか。
  隔離中の余暇について。筆者は、仕事、ウェブセ
ミナー、運動(毎日15km の室内ウォーキング、筋
トレ)、テレビつけっ放しなどで過ごしたが、食事
や検温のルーティンを含めると、想像していたよ
りはせわしない毎日。日中ベッドで横になる機会
など皆無。仕事面では「まとまった時間ができた
時にやろう」と、ついつい後回しにしていた作業
をたくさん持ち込んだはずが、悲しいほど捗らな
かった。

 

   テレビは、日本の全キー局の番組がリアルタイ
ムはもちろんのこと、1 週間分の全録画もストッ
クされているネットテレビ方式。BS/CS、映画・ド
ラマなども視聴可能。300 元/月の有償オプション
だが、室内の案内に従ってWeChat Pay で代金を送
れば、日本語対応係員がすぐに開通してくれる。
孤独な隔離生活への備えに、このサービスは青島
隔離推しの理由として大きな加点である。
   ゴミは、10:00、14:00、19:00 に係がドアまで回
収に来る。残飯はトイレに流し、容器はビニール
袋に密閉してドアの前に出すように指示があった
が、筆者はゴミの排出回数を減らす工夫(ペット
ボトルなど小さく畳んで減量化したり)がオタッ
キーな楽しみであった。並行して、いつでも交換
してもらえるタオルも、与えられた数量だけを計
画的に使い切ろうという不潔なこだわりを持ちな
がら隔離生活を過ごした。
   いわゆる自宅隔離との大きな相違は、電子レン
ジと洗濯機の有無に集約できるだろう。筆者は常
時軽装で過ごしたので、洗濯は大した量もなく苦
にはならなかった。1 月20 日のチェックイン日こ

そ寒さに震えたが、電気ヒーター(空調は防疫上
停止されている)の使い方を工夫したら気になら
なくなった。
   なお、部屋の中は全体暗めなのだが、一番明る
い蛍光灯が切れてしまい、ホテルへ連絡すると、
係員が入室しての交換はできないということで、1
度だけ部屋が変更となった。これにより、筆者は
ツインとダブル両方の部屋タイプを経験できた。
   更に余談だが、筆者は検温との相性が悪いよう
で、3 日連続で「外せない」タイミングに検温の巡
回がきたことがあった。すなわち、トイレ→スマ
ホ録画中→トイレである。「待ってくれ(稍等!)」と2 回大声で告げても、執拗に続くノックノック
ノック...。やっとドアを開けて応対した際に「待
ってもくれないのか?(没听明白碼?)」と嫌味を
吐いたら相手も憮然。以来、食事を届けた際に時々
ノックで知らせてもらえないという、ささやかな
報復を受けるようになった。それが当該事件の影
響かは誰にもわからない。定刻に弁当を運ぶワゴ
ン音がきこえたら、ドアの覗き穴から弁当の到着
を確認している自分って、何かナサケナイ。

■三食の無料中華弁当の満足度の高さよ  

   食事をワンフレーズで表すなら、老若男女問わ
ず日本人好みにカスタマイズされた中華弁当がひ
っきりなしに届く、と想像すればよい。ここでも
う1 つ強調しておきたいのは、ホテル側は3 食を
無料提供していることだ。
   朝食は、パン、粥、饅頭、油条などを中心に、ベ
ーコンとソーセージは必ず付属、納豆が出る日も
多い。一方、昼食と夕食は、米、餃子、チキンバー
ガーなど多彩な主食に、肉、魚、海鮮や野菜がバラ
ンスよく配置され、これにスープ類(酸辣湯や日
式味噌汁など)と果物(オレンジ、バナナ、ナシ、
リンゴのローテ)が必ずついてくる感じ。
   時々、独特の香辛料や辛すぎる味付けが口に合
わない日本人もいるだろうが、基本は相当日本人
好みに寄せたつくりだと思う。
   ボリュームも適量だが、筆者には主食を抜いて
も十分足りた。そもそも、食事をストレスにした
くないと、インスタント食品を大量に持ち込んだ
が、ほとんど消費する機会がない。

  同時に、しのぎを削って(←誰とだよ)開発中の
和食ルームサービスは、日進月歩でメニューが充
実化していく割りに、隔離客といえば常に満腹だ
から全く注文する気も起こらず(あってもビール
くらい)。少しホテルに申し訳ないと感じている。
  一度だけ、自分へのご褒美で、カツ丼(単品で58
元)と地ビール(10 元)を注文してみた。そした
ら(いわゆるカツ煮でない)ただのトンカツが出
てきてしまったことくらいはご愛敬だ。味は上々、
ソースだけは要改善だが、これからもっと味も向
上していくだろう。このホテルで再隔離される将
来への期待も込め、長い目で見守りたい。
  その他、ミネラルウォーター500mL、インスタン
トコーヒー(ミルク粉、砂糖)、リプトンの紅茶と
緑茶のティーパックは、まとまった数量が部屋に
備えられており、いくらでも補充してもらえる。
それにしても、青島はビールの名所なのに、注
文が何でもグループチャット経由ゆえに「昼間か
らビール」がややはばかれる。だからイヤなんだ、
グループチャットなんて。

■部屋の備品、日本から持ってきてよかったもの  

  ホテルの一般的なアメニティは一通り揃ってい
る。日用消耗品の交換・補充も利く。今回は隔離地
ということでホテル側の配慮で、ゴミ袋、体温計、
消毒液、洗濯洗剤なども常備されていた。
  また、タオル(4 枚)、ティッシュ(6 箱)、トイ
レットペーパー(4 個)、シャンプー・石鹸類(各
4 つ)など、隔離期間を想定して数量は多めにセッ
トされているし、タオルやシーツは、袋に密閉し
て出せば、清潔なものと交換してもらうことも可
能である。
  ちなみに、日本から持ってきて良かったものを
列挙すると:
- ウェットティッシュとボディタオル(ホテル備
品にない)
- インスタント味噌汁とお椀(空腹時は菓子より
こちらで凌ぐ)
- 洗面器(洗面台が水撥ねするので洗濯時に重宝。
レトルトカレーを湯せんしたこともしばしば)
- 電源延長コード3m(ちょうど自分の手の届く
場所にコンセントがない)
- セロテープ(延長コードを床に貼り付け固定や、
密閉ゴミ袋の補強など)
- ハンドクリーム(ホテル備品に乳液はあるが、
乾燥対策。洗濯が一晩で乾く)

- 短パン(寒さに慣れてきたら、洗濯も面倒なの
で軽装で過ごし続けている)
- 洗濯ロープと洗濯ばさみ(ロープはシャワール
ームにもあるが、天日干ししたいので。ただし
設置場所は要工夫)

  逆に、あまり必要でなかったものとしては:
- ラーメン、カレー、米、ふりかけなどインスタ
ント食品(3 食がひっきりなしに届くので、全
く食べる余裕がない)
- 洗濯洗剤(ホテル備品にあった)
- 洗濯用ブラシ(洗面台が水撥ねするので、手も
み洗いしかできない)
なお、便座が冷たいという意見が複数あり、貼
りつけタイプの簡易便座カバーがあった方がホッ
とできるかもしれない。
  また、ツインベッドだったら、寄せてくっつけ
てしまうと過ごしやすいのだが、ベッドの下は掃
除が行き届いていないため、ミニホウキなどもあ
れば心強い。
  余談だが、乾燥対策として、熱湯シャワーを1 日
2 回、5 分程度出しっぱなしにしていると、屋内の
窓が曇る程度に湿度を上げることができた。

 

■結局、隔離は何日間?  

 とりわけ最近は感染症情勢が刻々と変化してい
るので、本章は定点観測でしかないのだが、筆者
が青島へ渡航する直前は、北京市が「14+7+7」健康
管理措置を公布した時期であった。北京の友人ら
から、「お前北京戻り大丈夫か」と日々最新の隔離
情報が送られてきた。
 この頃の対策強化は、北京市内の一部でも感染
者が現れたこととともに、3 月に全人代を控える
時節柄だとも認識している。無論、首都防衛的な
側面もあるのだろう。
 筆者は、14 日間に加えて7 日間の隔離は厳しい
なあと感じつつも、本心は「もうどうにでもして」
と、諦めの境地。もはや中国式の防疫のやり方に
心の中で毒づく気力も失われつつあった。「青島で
隔離延長ならまたカネがかかるなあ、北京の自宅
公寓に戻れても食事の心配がつきまとうしなあ」、
と煩わしさばかりが脳裏を支配し、問題打破に向
けた前向き思考にブレーキがかかっていた。
 1 月20 日の青島渡航の前、旧知で公私お世話に
なっている日本人駐在員・シンさん(仮名)が同じ
便で隔離も一緒になることが判り、情報交換をし
ていた。シンさんは「+7 の問題は、青島行ってか
らの相談になるのだろう、ただ、一日でも早く北
京自宅へ帰ることを目指したい」というお立場。
 実際、青島での隔離生活に入ってから「北京に
はいつ行けるか」の情報収集をしたところ、都市
ごとに実にいろいろな見解を示していることが判
明。各地方当局の防疫指針に現場が対応中という、
よくある状態に帰結しているわけなのだが(そこ
は本当に現場に同情するし、労いたい):
- 例1:青島市政府は、青島での2 週間隔離後、
各地に移動するのが基本だと理解している。3
週間目も北京に戻らず延泊する場合は、早めに
申告しないと延長できない恐れがある。
- 例2:14 日隔離で北京に戻ったら、北京でも追
加で1 週間、集中隔離施設に連れて行かれた人
もいるらしい。よってシンさんも青島で3 週間
過ごしたほうが無難かと躊躇。

- 例3:青島とは別の都市で14 日間隔離され、
21 日未満だったが北京に移動した人もいる。
隔離元ホテルが延泊を認めてくれなかったの
と、北京の公寓社区が受け入れを了承したので
北京入りを果たせた。ちなみに、北京空港から
は地下鉄で帰宅して(←え?)、現在は自宅で
隔離を続行中。
 こうした対応の割れた情報が入り乱れるなか、
シンさんも、青島市、北京公寓と社区、航空会社な
ど関係各所と話をつけ、当初通達されていた「21
日前の北京入りは京心相助アプリで申告」なども
行うつもりで準備を進めてきたが、最終的には、
前々日に「青島空港が隔離21 日以下の北京入りを
認めない、搭乗も許可されない、ホテルも外出を
許可しない」のがんじがらめの通告。結局シンさ
んも筆者と同じ7 日間の青島延泊が確定した。
 このような厳しい隔離を含めた防疫施策により、
感染者数を極めて低い水準に抑えており、2 月7 日
には中国国内感染者(海外からの入国者を除く)
が12 月中旬以来ゼロになったことが報道されて
いる。

さて、筆者の青島隔離3 週間だけでも、対策は
実によく変更された。細かいことばかりだが、一
例を挙げれば:
- 14 日経過後の延泊は、感染リスクの低い階に
部屋を変更予定だったが変更不要になった。
- 青島市の政策変更により、12 日目のPCR 検査
は不要。
- 青島市の政策変更により、20 日目の隔離終了
前に検便して2 個の検体提出が必要。
え…検便?筆者としては、大連で肛門PCR 検査
が始まった噂を聞いて、青島は検便だけで済んで
ラッキーなのか、あるいは最後にやっぱ肛門、と
やられるのではないかと、もはや何を信じるかを
含めて「出たとこ勝負」の境地である。

 

■結びに代えて  

 どの国でも、責任取りたくない人たちほど厳し
い施策をとると不満を露わにする人もいるが、最
近、筆者は次のようなことを考えている。
 昨秋、中国のQ 市でごく少人数の無症状陽性者
が出た。筆者の同僚(中国人)が家族旅行中にその
Q 駅を高速鉄道で停車しただけで「健康観察対象」
に指定され、北京健康宝も黄色に変更され、自宅
社区から2 週間の自宅待機を命じられた。到底納
得いかない同僚は、随分と社区に抗議したらしい。
しかし、無理して出社したところで、万万万が一
同じタイミングに我らのビルで「何らか別の感染
騒動」が起こったら…?この同僚はオフィスビル
の方からも濡れ衣を着せられ、責任を追及され、
営業補償をも求められるリスクもあるのではない
だろうか。
 こう悲観していると、結局、国内・国外問わず、
移動はもはや隔離(や自宅待機)とワンセット。当
局から隔離(待機)指示を受けたら、無理に抵抗し
て自由を勝ち取れたところで、逆に不利な立場に
立たされるリスクしか残らないような気がするの
だ。被隔離者のジレンマ。本当に不本意だし、悔し
いのだけれども。

 そもそも中国では隔離(待機)の強制という手
綱を緩める気配はさらさらなく、その時々の施策
に従わざるを得ない以上、政府当局や航空会社、
ホテルにより安心安全かつ快適な待遇での隔離環
境を要望しつつ、どうせ隔離されるなら、の観点
で、その時々で与えられた隔離環境を楽しみ、隔
離中の時間を浪費しないように万全の準備で隔離
に望むしか方策はないのかなと思う。
 その意味で、青島はいろんな関係者がスクラム
を組んで努力し、快適な隔離環境が整備されてい
る都市である。筆者は、結果として隔離地が青島
でよかったと心から思っている。本稿を通じて、
その一端を少しでも感じていただけたら幸いであ
る。

以上

 

 
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