月刊青島--青島日本人会生活文化会発行
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青島の空の下で(70)  
   

  春節を前にした日々は何か落ち着かない。休み前に片付けなくてはいけないと最後の追い込みのようなこともあるが、一方で今更騒いでもなんともならないという諦めムードというのもある。そして出来なくても誰もが春節だから仕方ないと怒るでもなく聞き流すようなところがある。交通量も減り街が静かになっていき街灯の紅い飾りとともに綺麗になってゆく。

  春節の大晦日に一家が集まり 宴を張ることが一番の大事ということで、親の待つ田舎に向かうが、故郷を持たない都市の家族は近年 この休みを利用して海外や国内の観光旅行に出かけ、親戚の集まりがあってもA家族は○○に、B家族は✖︎✖︎へと出かけて全てが揃うのは難しくなっていた。
今年はそういう意味では何処にも出れないし、出るにも勇気のいるような按配で、同じ市に住む親族は久し振りに全員揃うかもしれない。ホテル内のレストランは予約で一杯であった。人数制限が出てキャンセルになるかもしれないが。

  学校はもう春休みになっていて、塾に通う子たちもコロナの影響を受けて外出を控えるようにと言うお達しで各家庭とも苦労しているようだ。平日の昼、時にはということで近くの5つ星ホテルのバイキング会場に出向いた。少し早めの11時半であったがすでに満席で予約がないと入れないと言う。大人は398元、子供198元、高齢者(61歳以上200元)の設定。仕方なく翌日の予約をして帰った。翌日の同時間、会場はほぼ満席で すでに各卓の上には料理が一杯並び、さらに新しいものを目指して出かけている。真ん中にバースデイケーキを置いてあるグループも幾つかあった。

  中国式バイキングというのだろうか。そうした卓上のまず目につくのはワタリ蟹。甲羅は10センチくらいの小ぶりである。メイン料理の一つではあろう。陳列の中にその品はない。6人グループのテーブルに山と積まれている。骨付き羊のあばら肉。これもテーブルの皿から溢れるばかりに置いてある。とにかく1人が皆の分をよそい、それを複数が取ってくる。まさにバイキング=かっさらいといった公式である。
お爺ちゃんが孫娘に羊肉があるよと自分の箸でつまんで渡そうとすると嫁に叱られる。T Vでは盛んに料理を自箸で渡さないよう宣伝している。会場ではワインは置いてあるが白酒で乾盃はない。タバコも吸えなくなった。大声を出して話すと嫌がられる。取りに行くのは面倒だ。卓上にはデザートの果物やケーキまで置いてある。それで終わりではなく3時間近く何度も行き来する。皆がもってきたのを黙々と食べる以外にしようがない。満漢全席の流れと言えようか。

 


 
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